皇室の長い歴史の中には思いも寄らないことが起こっている。
例えば、天皇ご自身が泥棒と“鉢合わせ”をされたり、とか。
にわかに信じがたい話ながら、国家の正式な歴史書(正史)であり、
朝廷の公的な記録を元に編纂された『続(しょく)日本後紀』の
記事に出てくるので、確かな事実だろう。承和(じょうわ)4年(837)12月5日の出来事。
当時の天皇は54代・仁明(にんみょう)天皇だった。この日の夜、天皇の日常のお住まいである平安京内裏の清涼殿
(せいりょうでん)に、女性の盗賊が2人、侵入した。
それをたまたま天皇ご自身が見付けられた。
『続日本後紀』には「天皇愕然(がくぜん)」と表記してある。
さぞや驚かれたに違いない。天皇は直ちに側近の蔵人(くろうど)らに命じて、
宿直の者に捕らえさせた。
しかし、逮捕できたのは1人だけ。
もう1人はまんまと逃げおおせたという。
まだ古代王朝が衰えを見せていない時代だった。
にも拘らず、天皇のお住まいがいかに無防備だったかが分かる。
勿論、不祥事には違いないものの、平和な国柄を偲(しの)ばせる
エピソードだろう。念の為に井筒清次氏編著の『天皇史年表』を覗くと、
この記事もしっかり収録していた。【高森明勅公式サイト】
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